キシリトール
 コンビニでも売られているキシリトールガム、TVCMで流している程のむし歯の予防効果があるのでしょうか。患者さんから多く頂く主な質問にお答えする形でご説明させていただきます。
1. 予防効果は?
2. その実態は?
3. その使い方は?
4. 値段、形や量もまちまちですがどれを選べば良いのでしょうか?

1. キシリトールの予防効果

 まずむし歯とは、むし歯菌量(13歳以上日本人の90%は保菌者と言われています)、唾液の量、質や酸を中和する能力、飲食回数、歯磨きの回数など、様々な因子が複雑に絡まって起きる病気であり、1つの方法で全てを解決する予防法はありません。したがって、個々の因子を除去する予防法を組み合わせて用いられています。
 キシリトールを用いた予防法も歯磨きや歯科医院での定期検診など、予防管理に取って替わるものでは無く、これらを補足するものである事をご認識下さい。
 バイオフィルム中のむし歯原因菌(S.ミュータンス菌など)を減少させ、むし歯を作る酸を抑制する効果があります。
S.ミュータンス菌は通常、糖を取り込み代謝して酸を生成します。その酸によりむし歯が始まります。しかし、S.ミュータンス菌はキシリトールを取り込む事ができないので徐々に弱って行ってしまい、酸を生成できません。
 キシリトールを使い続けると、先ず口腔内のバイオフィルム中のむし歯を起こす菌だけを除菌する効果がなされ、細菌の数が少なくなります。さらに使い続けて行くとむし歯になりにくい細菌が集まったバイオフィルムに変わって来ます。これによりバイオフィルムの粘丁度の低い性状の変化によって歯磨きがし易くなります。
 フッ素は再石灰化など歯への対応が主であるのに対して、キシリトールは原因菌に直接的に働き、むし歯の予防効果を発揮します。

2.キシリトールとは

 キシリトールとは天然素材の代替甘味料で、白樺や樫など広葉樹の木の皮、ブルーベリやイチゴなどベリー系の果物や野菜などに含まれています。
 フィンランドでは白樺の木の皮から取れる成分を原料として主に生産され、カロリーは砂糖の約75%、そして、むし歯予防の効果が認められています。
インシュリンに影響を与えないため、医科の現場では以前から糖尿病の患者や点滴にも使われていました。

3.キシリトールの使い方

 ポイントは 口の中に唾液が一杯になった時にすぐに飲み込まず、出来るだけ溜めて口腔内全体に行き渡らせると効果があります。
味がなくなっても5~10分間は噛みましょう。
 キシリトールを毎日、2~3年摂り続けることでむし歯菌の除菌的効果が現れ、その後も効果が持続され易くなります。歯の萌出期は量や回数を増やすと良いと思われます。食事、間食の度に使用すれば効果的とお考え下さい。
 歯磨きの後は飲食しない生活習慣を身につけた方が良いと考えますので、キシリトールの使用は歯磨きの前にして下さい。研究報告によれば歯磨き前と歯磨き後での差はありません。またフッ素入り歯磨剤とキシリトールを併用すると効果は増大するという統計が発表されております。
 ガムタイプの方が、噛むことにより唾液がより多く分泌されるので、こちらの方がお勧めですが、ガムが噛めない方はタブレットを使用し、できるだけお口の中に長く留まるように摂取する方法が望ましいでしょう。
3-aタブレット(アメ)タイプ
幼児の子供には、1日の使用量として1.5gを食後の3~4回などに分けて舐めさせるのが望ましいとされています。当院でも取り扱いのある実際の使用例をまとめてみました。
* ロッテの 「 キシリトール•タブレット オレンジ味 」 の例;
1製品に82粒(43g) キシリトールは37.1g含有 1粒あたり 0.45g となります。よって毎食後3回、1回1粒使用で1.35gとなります。推奨量として毎食後と就寝前の4回、1回1粒使用で1.8g となります。
なお、製品外装パッケージには大人の使用例として「1日摂取目安量:1回に3粒を5分舐め、1日7回を目安に、1週間続けると効果的です。」と記載があります。

3-bガムタイプ

キシリトール100%ガムを使用する場合では、1日5~7gの量を毎食後と間食の後、就寝前などに1日5~7回1粒ずつ噛むことが薦められます。

* ロッテの「キシリトール・ガム[ LIME MINT ]ボトル」の例;
1製品に100粒(150g) キシリトール(53%)は64.3g含有されており1粒あたり0.643g含有されている事になります。
 子供への対応として毎食後3回、1回1粒使用で約1.93gを摂取。
 大人の有効量として毎食後と就寝前の4回、1回2粒使用で約5.14g 摂取となります。推奨量とし一日7回、1回2粒使用で約9g 摂取となります。
外装パッケージには大人の使用例として「1日摂取目安量:1回に2粒を5分噛み、1日7回を目安に、1週間続けると効果的です。」と記載があります。

 北欧フィンランド、トゥルク大学歯学部生化学教室エバ・サーダリンらの報告によると、「お子さんが生後3,4ヶ月~24ヶ月の間は、保育者がキシリトールのガムを毎日4個ほど噛んだ場合、子供への感染率は著しく低くなる。」とあります。
 お子さんは生まれてくる時、無菌状態で生まれてきます。6割以上のお子さんはお母さんから感染しています。お母さん、お父さんはむし菌を増やさない・移さないためにも、妊娠安定期までに歯科の治療を済ませておきましょう。
ご自身の口腔内環境・特にむし歯菌の数や唾液の状態を調べておくことをお勧めいたします。絶対に箸、スプン等の共有、食塊の口移しは止めて下さい。
 13歳以上の日本人の90%以上がむし歯菌に感染している、との報告があります。既にお子さんにむし歯菌の移り込みが行われてしまった可能性がある場合は、歯科医院を早期に受診してみましょう。

4.キシリトール製品を選ぶ基準は?

 フィンランド歯科医師会が推奨するキシリトール製品の条件を当院もお勧めします。
1. ガムまたはタブレット中の甘味料あたりの50%以上がキシリトールである事。100%であれば、より望ましいが、もし無ければ100%に近い物。
2.キシリトール以外の甘味料も非齲蝕原性(むし歯を作らないもの)である事。3.総重量のほとんどがキシリトールで占められる事
 以上のポイントが満たされている製品を推薦されます。キシリトール含有量が多いほど予防効果は高くなりますが、代替甘味料の成分が増えればお腹が下り易くなります。厚生労働省が定める特定保健用食品として登録されている製品であれば問題はありません。

4-b.キシリトールは安全か?
 FAO(世界食料農業機関)/WHO(世界保健機関)合同の規格委員会より、「1日の許容摂取量を限定せず」というもっとも安全性の高いカテゴリーとして評価されています。しかし過剰摂取(キシリトール量20~30g/1日、以上の使用)でお腹が下り易くなることがあるので、症状が続くようなら、一時摂取を止めましょう。

いとう歯科