歯の調子が悪いなと感じても「まだいいかな」と先延ばしにしがちな歯科受診。受診することにより、糖尿病、認知症、良性腫瘍、悪性腫瘍、貧血、ウイルス感染など虫歯や歯周病以外の病気が見つかることもあるですよ。当院では健康維持のお手伝いをさせていただく事をモットに対応させていただいています。

その筆頭が糖尿病。糖尿病のサインとして歯肉が腫れたり、「口や喉が渇く」などの症状、汚れが溜まったりするなど、口の中に変化が現れてきます。日本糖尿病学会が定める「糖尿病診療ガイドライン2016」においても、歯周病が血糖コントロールに影響を及ぼすなど、糖尿病と歯周病の密接な関連が指摘されています。

また、認知症予防を考える上でも、歯の健康状態は重要なポイントです。厚生労働省研究班の研究によると、65歳以上の高齢者のうち、歯がほとんど残っておらず、義歯も使用していない人は、20本以上歯が残っている人にくらべて、認知症発症のリスクが約1.9倍も高くなることが判明しています。(a) また、日本大学歯学部落合邦康特任教授の研究チームが2017年5月に発表した研究では、歯周病の原因菌が作り出す酪酸が脳内に取り込まれ、アルツハイマー病発症の一因となる可能性が指摘されています。(b)

当院の歯科検診で癌病変だけでは無く、良性腫瘍や嚢胞などの粘膜疾患も見つかる事が時々あります。定期的に診せていただいていると、早い段階で気付け、当院でも年間1〜2件、癌化していない前癌病変の状態で発見し、日赤病院や大学病院などの専門病院にご紹介させていただいています。また膠原病やアレルギー性粘膜疾患なども毎年1〜2件発見し、医科にも受診する事をアドバイスさせていただいています。

歯科検診の重要性は「患者さん自身が歯,歯茎の調子が悪いと自覚する段階になると、歯周病や虫歯はかなり進行しています。しかし、歯科検診を定期的に受けていれば、もっと軽い段階で気付くことができます。また自分の歯が経年に伴ってすり減る半面、金属などの詰め物などは擦り減りにくく、かみ合わせが悪くなっていきます。その結果、顎の位置が変わり、顎関節症や頭痛の原因になることもあるんです」。

「歳を重ねても健康な歯を維持している方はたくさんいらっしゃいます。若いうちからメンテナンスを行っていれば、いつまでも好きな物を食べ、大きく口を開けて心の底から笑って元気に過ごす事ができるんです。痛くなってから受診するのでは無く、健康維持のために定期検診を受診していただくよう心がけていただけるとありがたいです。

 

引用文献:

(a)小坂健(東北大学大学院歯学研究科教授)「口腔の状態・機能、かかりつけ歯科医院の有無の心がけと認知症発症を伴う要介護認定との関係:AGESコホートデータによる分析」/厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究事業「介護保険の総合的政策評価ベンチマークシステムの開発」研究代表者=近藤 克則(日本福祉大学 健康社会研究センター).H22年度総括研究報告書
厚生労働科学研究成果データベース閲覧システム(2017年10月13日に利用)

(b):毎日新聞医療プレミア 2017年5月22日, 朝日新聞デジタル2018年1月06日掲載記事

 

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