コロナ禍ワクチン製造する為、局所麻酔薬のカトリッジ製造ラインがワクチン用に転換され、歯科用局所麻酔薬の製造料が低下し、全国の歯科医院で麻酔液が入手困難になりました。当院では4種類の麻酔液を開業以来用意し、使用していたので、何とか欠品せず診療を行なっておりました。ただいつ欠品するか分からない供給が不安定な状態が続いていたので、新たな麻酔液がないかどうか世界中の文献を読みあさって、探しておりました。そんな中、岡山大学が治験している新たな麻酔液がある噂を聞きつけ発売されるのを待っておりました。

 臨床治験より10年以上掛かり、そしてようやく今年2025年に、新しい歯科用局所麻酔薬アルチカイン商品名:セプトカイン配合注カートリッジが販売されました。日本では、2002年に販売されたスキャンドネストカートリッジ3%(メピバカイン製剤)以来、23年ぶりの歯科用注射用麻酔剤となります。

 アルチカインはリドカインと同じアミド型局所麻酔薬で、基本的な性質は他のアミド型局所麻酔薬と類似していますが、代謝が速く、毒性が比較的低く、安全域が広い、という特徴を有しています。

アルチカイン製剤は、すでに多くの国で使用されており、世界的にはリドカイン製剤と並んで使用されている代表的な歯科用局所麻酔剤です。1976年にドイツ、スイス、1984年にカナダ、2000年にアメリカで導入されており、わが国はドイツやスイスから半世紀、アメリカやカナダから四半世紀遅れて導入されました。

アルチカイン製剤はこれまで使用されてきたリドカイン製剤、プロピトカイン製剤、メピバカイン製剤すべて置き換わるというものではありません。ただ診療を行う上で、診療の質を向上、患者さん負担を減らす努力を日々しておりますが、その一環として選択肢を増やせて頂きました。